2021年5月に行わらた、オンラインセミナー~「きちんと知りたい ME/CFS」筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群~の事前質問に三羽先生が答えてくださいました

■ブレインフォグ・脳疲労について■

Q.会社に復職して一番ショックで困ったのは、ブレインフォグでした。この症状はよくなりますか?緩和する方法・防ぐ方法はありますか?

A.基本的に疲労感、Brain fogともに脳の前頭前野の活性化不全が強く関係しています。
したがって、両症状は並行して動く、すなわち疲労感の軽減は脳疲労の軽減も伴うものと考えています。
脳が働かなくなると脳の活性化が起きないので脳はさらに悪くなり悪循環に陥ります。

 

Q.ブレインフォグ・脳疲労の治療法はありますか?

A.脳疲労に特化した治療法は特にありません。ただ、rTMS治療直後はほとんどの方が頭がすっきりした感じがするとおっしゃいます。

 

■治療について■

Q.自分でできる免疫療法はありますか?

A.免疫を高め、また、脳疲労改善には、本当は運動が良いのですが…。リラックスする時間が大切です。緊張の連続は、症状の悪化をきたします。

 

Q.コロナ疑いから、今年の3月ME診断を受けました。
発症から1年以内が治療効果が高いと聞いて、少々焦って参りました。
温和療法やtmsも早期に行った方が効果がありますか?

A.発症から早ければ早いほど治療効果が期待できます。ミノサイクリン治療は特に早いほど効果ありです。
これについては、小生、最近、論文をIntern Medに早期公開で出しています。

 

■薬について■

Q.ノイロトロピンと慢性疲労症候群の関係について知りたいです。

A.疼痛(線維筋痛や神経障害性疼痛)の改善にはノイロトロピン、リリカ、トラマールなどが使われます。

 

Q.漢方やサプリについて知りたいです。

A.サプリメントとして比較的好評なのはイミダペプチド、アミノバイタル、還元型コエンザイムQ10です。

 

Q.内服薬は1人1人違いますが皆さん何を服用されていますか?増悪する時用の頓服はありますか?

A.よく使われる薬は、ユビデカレノン(CoQ10)、ビタミンC、エルカルチン(やや高価)、ルシドリール、漢方薬(補中益気湯、十全大補湯、コタロー人参養栄湯などです。
その他、消化器系などの症状改善にあらゆる薬が使われます。

 

Q.動きたい日の為にその日だけ動けるようになる薬はありますか?

A.頓服薬として副腎皮質ホルモン薬のコートリル5mgを服用すると、その時だけ活動しやすくなることがあります。

 

Q.私はこの病気になってから鎮痛解熱剤や喉の炎症の時にトラネキサム酸などの抗炎症剤などが効かなくなったのですが、他の患者さんもそうなのでしょうか?

A.この類の痛みには通常よく使われる消炎鎮痛剤はあまり効果がありません。漢方薬では麻黄附子細辛湯でしょうか。

 

■障害者手帳について■

Q.完全に日常生活に支障があっても身体手帳が発行されない理由を聞きたいです。(専門医に聞きたいところなんですが常に状態を話すだけで時間とてもかかるためなかなか聞けない状況です)

A.日常生活が大きく制限されるほど障害の強い場合にが障害者手帳が取得可能でなければなりません。
主治医がしっかりと障害内容を正確に書類に記載することが必要です。
具体的には、労作後消耗感遷延、起立不耐症、平衡障害によるめまい、ふらつき、疼痛(線維筋痛症)、筋力低下などです。
ただ、これは精神科や心療内科の医師では無理な場合もあるでしょう。

 

■予後や患者の生活その他について■

Q.寛解された方はいらっしゃいますか?

A.寛解は少ないですがあります。5%ぐらいでしょうか?部分寛解は少し期待できます。
無理せず、焦らず、機会を待ちましょう。
チャンスを生かせるよう、足の筋肉だけはあまり落ちないようにしましょう。少しトレーニングを。

 

Q.一生寝たりの可能性は高いですか?

A.寝たきりに近い人は25%位、でも無理すれば、少し活動できます。

 

Q.職場でも配慮してくれてはいるのですが、中には「治る病気なのか?」と思われている人もいるようです。個人差もあるとは思うのですが、特に職場でこういうことを聞かれた時にどう答えるといいでしょうか?

A.本疾患を説明するときは、難治性で治療法なし、現在、種々の治療法が模索されている、との説明でいかがでしょうか?

 

Q.自費治療でマイヤーズカクテル点滴、プラセンタ点滴、ビタミン点滴など聞いたことがありますが、体験されて効果あった人はどのくらいいらっしゃいますか?また、どこで受けられますか?

A.点滴は、疲労感には効果なしです。ノイロトロピンなどは疼痛緩和には役立ちますが。

 

Q.気圧変動などで症状が強くなる時は普段から気をつけたらいいことや前もって準備しておくことはありますか?

A.気圧の変動は症状に関係することが少なくありません。低気圧の時は耐えねばなりません。

 

Q.筋痛性脳脊髄炎の専門医によるオンライン診療を受診したいのですが。

A.本疾患にオンライン診療している施設を全く知りません。

 

Q.発症当初の半寝たきりの状態から、日常生活をおくれるまでに回復できましたが、何故、回復できたのか自分でもわかりません。投薬治療以外でした事は、ストレッチ、低位舌の改善、深呼吸、湯たんぽで首やお腹を温めること、代替療法でカイロプラクティックです。何がよかったのでしょうか。

A.和温、湯たんぽの他、温泉なども良いでしょう、からだは温めることです。もちろん、長湯は禁物ですが。それとリラックスする時間です。自律神経を改善します。

 

■新型コロナウィルスについて■

Q.新型コロナに感染した場合、筋痛性脳脊髄炎の症状がどう悪化するのか、後遺症はどうなるのか心配です。

A.筋痛性脳脊髄炎を引き起こすきっかけになると考えています。早めのミノサイクリンの治療が効果ありそうです。

 

■ME/CFSや患者をとりまく環境について

Q.国立精神・神経医療研究センターが、バイオマーカーとなりうる新たな免疫異常を発見したと発表されましたが、今後CFSのバイオマーカー、そして治療薬の開発へと期待されると思いますか?先生のお考えをお聴きしたいです。

A.バイオマーカーは他の疾患、過労、うつ病、いろいろな病気からの疲労と区別できるかの検討を加える必要があります。
また、通常の検査項目として採算に耐えうるか、という問題もあり、まだまだ先のことになりそうです。
気長に期待しましょう。治療薬も同様です。

 

Q.海外や日本でどれくらい慢性疲労症候群に対しての医療が進んで
いるのか知りたいです。

A.海外では、NPO法人にあたる組織活動は日本よりは進んでいるようですが、まだまだで、医療面では日本と差があるようには思えません。

 

Q.アレルギーと病気の関係を知りたいです。
(アレルギー症状が出ているときに症状が悪化するような気がする)

A.本症では、経過が長くなるにつれて、薬剤、食物、種々の刺激に過敏性が見られることが多くなるようです。
これらアレルギー症状に対しては、抗アレルギー薬で症状の緩和を期待しても良いでしょう。
少なくとも一部には有効です。